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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

敵は強者

特殊清掃の仕事を遂行する上で立ちはだかる壁としての代表格は、悪臭・腐敗液、そしてウジ・ハエ。常連の読者に今更言うまでもないことだろう。
悪臭は忍耐力と薬剤を駆使して、なんとか押さえ込む。
腐敗液は、脳の思考を停止させて、なんとかきれいにする。
生きたハエは外へ追い出し、死んだハエは塵として処分する(死んだウジも同様)。

問題は生きたウジ!
彼等は一体どこからどうやって発生してくるのか不思議で仕方がない。
一見、密室に見えるような部屋でも、遺体にはウジが湧く。特に、腐乱死体にはほぼ100%の確立でウジがついている。
彼等はどこからやって来て、どうやって死体に湧いてくるのか・・・。
そして、その生命力と繁殖力には凄まじいものがある。

「敵ながら、アッパレ!」だ。

ウジに関する思い出は尽きないくらいあるが、その中でも強烈だった一事例を紹介する。
まだ、「腐乱」とまではいかず、腐敗が始まった程度の遺体。
腹部は黒緑色に変色してきており、明らかに腐敗の進行が見てとれた。
もちろん、異臭もあり。

死後処置では、口・鼻・耳などに綿を詰めて体液漏れを防ぐ処置を施すのだが、口の中に大量のウジを発見。腐敗初期の遺体なので、ウジの大きさもかなり小さい。
口の中に無数のウジが這い回っているだけでも、結構な気持ち悪さがある。
「口の中に大量のウジがいる」ということは、「鼻にもいる」ということ。
鼻の穴を覗いてみると、案の定、彼等はいた!しかも、無数。
念の為、耳も見てみると、残念ながらそこにも居た。
ここまではよくあるケース。

更によく見ると、目蓋の隙間にも小さなウジが見え隠れしている。
「ひょっとして、眼球にも?」と驚きながら、目蓋を開けてみた。
そこには、眼球を覆い尽くす程のウジが集っており、さすがに背筋の悪寒が走った。
さすがに、「ギョエ~ッ!!」って感じ。
遺体の目の次は、こっちの視覚もやられてしまった!
可能な方は想像してみてほしい。目の玉がウジで覆われている状況を(寒)。
それらを一匹づつピンセットで摘みだしていく作業は手が震えるくらいに精度の高いテクニックが必要。なにせ、遺体腐敗がその段階のウジはとにかく一匹一匹が小さいもので、摘みにくい上に気が遠くなるほどの数がいる。
しかも、遺体の眼球を傷つける訳にはいかないし。
しかし、あまりモタモタやっていると、身の危険を察知したウジ達は肉を通して眼球の裏側へ逃げて行く。
全く、恐るべし!

そんな嫌われ者のウジだって、世の中にとって何かしらの存在意義があるのだろうと思う。
私と同じように(苦笑)。
かつては、

「世の中にウジが居なくなったら、どうなるのだろう」

と真剣に考えたこともあった。ホント、どうなるんだろう。
社会的評価は低いけど、彼等は彼等なりに社会貢献している部分もあるはず。これも私と同じように(苦笑)

普段は敵対関係にありながらも、似たような境遇にあるウジと私。
しかも、頻繁にお目にかかるので、敵ながらも妙な親近感が湧いてくる。
喧嘩友達とでも言えるだろうか。
新たな現場に行って、

「アレ?ここはあまりいないなぁ」

と肩透かしを食らいながら、汚染された床のカーペットを捲り上げると、期待通りに?ウジ達がビッシリ所狭しとウヨウヨしている。
それを見た私は「よ~し、いるいる!」(興奮)ってな感じで、

「今日も正々堂々と闘ってやるぞ!」

と一気に戦闘モードへシフトチェンジ!・・・やっぱ、感覚がおかしくなってんな、私は(笑)。

以前にも書いたが、市販の殺虫剤(ウジ殺し)はあまり効かない。
腐敗液に汚染された床を覆い這いまわるウジに大量のウジ殺しをかけても、彼等は気持ちよさそうに?その中を泳ぐ(実際は苦しくてもがいているのかもしれないけど)。

その様はまさに・・・
まず、フライパンに炊いたご飯を入れ、そこにご飯がヒタヒタになるくらいの牛乳を入れる。隠し味に醤油を適量加えて、想像力を膨らませながら見ると・・・恒例の?食べ物シリーズ第二弾で、美味しいドリアのレシピを教示しようと思ったけど、記事の流れから私が何を考えているか先読みされたと思うので、この先はやめておこう。

私も男だ。抵抗できないことをいいことに生きたウジを踏み殺すような卑怯な手は使わない(実際は、気持ち悪くて踏めないだけ?)。
直接触って片付けるのが正攻法。気合を入れて摘んで集めて、ポイッと始末。

対ウジ戦は苦戦することもあれば、楽勝の時もある。
今のところは連戦連勝。
しかし、残念ながら最終的にこの戦いを制するのはウジの方と決まっている。
何故なら、この私にもいつかはハエが集りウジが湧く日が必ずやってくるからである。
当然、読んでる貴方も他人事では済まされないよ。

誰にも、いつかは必ずウジが湧く日が来るのだから。

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