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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

死体市場

東京で最も有名な市場は、築地の魚市場だろう。
テレビの食べ物番組でも、よく放映されている。

私は、中には入ったことはないけど、たまに市場前の通りを車で走る。
朝早くから、たくさんの人が働き、たくさんの車が出入りしている。
そして、場外には、おいしそうな店が軒を連ねている。

機会があったら立ち寄って、食してみたいものだ・・・
あ!ここに行けば、美味しいウニ丼があるかもね。

食べ物を扱っているせいもあるのだろうが、活気あふれる魚市場からは人が生きるエネルギーを感じる。

身内や知人の葬式で、一度くらいは火葬場に行ったことがある人は多いと思う。
仕事柄、私は首都圏の火葬場は一通り行っている。

火葬場には色々な施設がある中で、私が縁のある部屋はやはり霊安室。
霊安室には、柩に納まった状態の遺体が、保管されている。
また、納棺作業をその場で行うことがある。

死亡者数が少ない時期は、霊安室もガラガラ。
多い時期は、保冷庫も満杯になり、棚や床に柩が並べられる。
場所によっては、歩くスペースもなくなるようは所もある。
ある種、壮観な光景でもある。

霊安室だからと言っても、特に暗い雰囲気はない。
絶えず保冷庫と空調の動く音がしているような、機械的な所。
無機質な構造に冷たさはあるものの、精神的に受ける悲壮感はない。
あくまで仕事場。

人は一年を通して平均的に亡くなっていくのではなく、季節ごとに大きな波があり、日ごとに小さな波がある。
亡くなる人が増えるのは冬場。
気温や気圧が影響するのだろうか、冬は葬儀業界が活気づく季節だ。

忙しい時期の火葬場には、魚市場のような活気がある。
一口に葬式と言っても、それは多種多様な仕事で構成されており、それぞれの専門業者・専門部署に分業されている。
したがって、一つの葬式も実に多くの人の働きがあって成り立っているのである。

都市部の火葬場では、毎日何人もの人が焼かれる。
当然のことだが、葬式の裏方は辛気臭い雰囲気で仕事はしない。
葬式がたくさんでる時期に火葬場が活気づくのも自然なこと。

忙しく立ち働く多くの人、激しく出入りする車、遺体や柩があちこちに運ばれていく様・・・
死人は異なれど、いつもと変わらない手際よさで葬式の準備が整えられていく・・・
そんな光景を見ていると生きていることのエネルギーを感じる。

死人を送る仕事によって生きる糧を得る。
(糧とは、金銭のみを指さず。)

不謹慎な言い方かもしれないが、そこは魚市場ならぬ死体市場。
死者を送る仕事に関わっている私自身も、いつかはこういう所で灰にされる。
それは、逃れられない現実。

「俺も、いつかは死ぬんだなぁ・・・」
自分の死は、にわかに信じ難いことでもある。

何度も同じようなことを書いてしまうが、生きていることって、ホントに不思議なことだ。

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