Home特殊清掃「戦う男たち」2006年分野次馬

特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

野次馬

人は誰しも好奇心を持っていると思う。
特に理由もないのに「知りたい」と思う気持ちだ。
それは、有意義に働くこともあれば無意味な行動をとらせることもある。

その両者は五分五分ではない。
自分の経験で言うと、残念ながらそのほとんどは無意味な方に働いている。
自分にとって関わりのない知識や、自分に影響を及ぼさない(自分が影響を及ぼせない)情報を得るために、いかに多くの時間を費やし、多くの手間をかけているか。

好奇心を持ち見識を広げることは大事だが、無闇やたらの好奇心や度を越した好奇心は、時間(人生)を無駄にするだけではないかと、自分の中で危機感を持っている。

有名人のゴシップを笑うヒマがあったら、自分を省みた方がいい。
大企業の株価を気にするヒマがあったら、秋刀魚の値段でも観察した方がいい。
政府の政策を憂うくらいなら、自分ができることを考えた方がいい。
流行に追われるくらいなら、流行から外れた方がいい。

自分が知っていても知らなくても現実に影響しないことは世の中にたくさんある。
なのに、そんな情報・知識を得るために膨大な時間・労力を費やしている。
持っている知識・情報の量で人間の能力(価値)を計るような風潮がある。

自分が本当に知っておかなければならないこと、真に覚えておかなければならないことが蔑ろにされているような気がする。

自分にとって大事(本当に必要)な知識・情報が何であるかを整理するだけで、随分と時間(人生)の無駄が省けるのではないだろうか。
得ようとする知識・情報の優先順位を考えながら、それらを選別していきたいものだ。

車で道路を走っていると、「事故渋滞」に遭遇することがある。
走行車線が規制されたりすれば渋滞が発生するのは当然。
しかし、走行車線が規制されない反対車線まで渋滞することがある。
いわゆる「見物渋滞」だ。

みんな、それなりに急いでいるはずなのに事故現場にさしかかると見物のために徐行する。
そんな渋滞にハマるとイライラしてくる。
「野次馬根性だしてないで、さっさと行けよ!」
かく言う私が事故現場にさしかかると、ブレーキを踏みながら、
「どれどれ、事故の具合いはどんなかな?」
と、しっかり野次馬の一員になっている始末。
大きな事故だと、
「こりゃ、人が死んだな」
と、軽く(冷たく)走り去る。

遺体がらみの現場には、野次馬が集まりやすい。
もちろん、黒山のハエ・・・もとい、黒山の人だかりができる程ではないものの、チラホラと人が寄ってくる。

私の作業を、ただただ遠目に眺めているだけの人もいれば、話し掛けてくる人もいる。
また、話し掛けてくる人の中には、事情を知らずに尋ねてくる人と事情を知っているのにそれ以上のことを聞き出そうとしてカマをかけてくる人がいる。

関係者以外の人に対しては、「故人や遺族のプライバシーも守られるべき」と考えるが私は、「詳しいことは知らない」ととぼけるのが常。
ただ、腐乱臭がプンプンする特掃現場で、
「ここで人が死んだんですか?」
と尋ねられて
「詳しいことは知りません」
と応えると
「こいつ、アホか?」
みたいな顔をされる。

関係者のフリをして近づいてくる筋金入りの野次馬もいる。
例えば、遺族・不動産会社・大家の関係者を自称したりして。
そんな人は、「死体」とか「腐乱現場」に対する好奇心が抑えきれないのだろう。
または、噂話や陰口が大好きな地域の「情報通」か(こんな人はどこの地域にいるんだよね)。

そんな人は直感的に「怪しい」と感じる。
こんなケースでは、野次馬に悪意すら感じることが多いので、私は無視することにしている。

そんな猥雑な日々の中、昨夜、今秋初めて焼イモ屋の車を見かけた。
なんだか、ホッとするような幸せを感じた。

芋は、馬も好きだしね。

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