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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

空たかく

今年の冬は暖冬と言われている。
確かに、その実感はある。
東京では、例年2~3回は積もる雪も、今だに降っていない。
空の高い晴天の日は、春を思わせるような日が多い。
地球温暖化・異常気象云々の難しい話は置いといて、単純にそんな陽気は気持ちいいものだ。

私にとって冬という季節は、肉体的には楽で精神的にはツラい季節。
ただ単に、「寒さが苦手」とか「夜の長さが気持ちを暗くさせる」と言うことだけではなく、何とも説明のつかない闇が心を支配してくるのだ。
そんな冬の日々の中で最もツラいのが明け方・早朝。
ただ単に、「眠い」とか「寒い」と言うことだけではなく、何とも言えない悲壮感に苛まれるのだ。

「このまま、夜が明けなければいいのに・・・」
「このまま、目が覚めなくてもいいかもな・・・」

それでも、布団から出たがらない気持ちを無視して、身体だけは這うように起き上がらせる。

そんな私には、
「○○したくない」
「○○になりたくない」
等と言う負の欲とは逆に、
「○○したい」
「○○になりたい」
等と言う正の欲もある。

食欲・情欲・金銭欲・物欲・名誉欲・自己顕示欲etc
キリがないくらいに色んな欲がある。

腹が減れば何か食べたくなる。
どうせ食べるなら美味しいものがいい。
お金は1円より100円、100より1000円、1000円より10000円。
愛のある1円より、愛のない10000円を好む。
他人のことはけなしてばかりだけど、やたらと自分は褒めてもらいたがる。
見栄を張ってまで、善人を装う。
人間の、地を這うような欲望には際限がないのか。

では、「欲」とは何だろうか。
分かりやすく、「人生の快楽を求めること」としよう。

人生の意義を「快楽」、つまり「楽しむため」と位置付けている人は多いと思う。
そうなると、楽しさ・楽しみのない人生は意味がないということになる。
かつての私も、そういう価値観を持っていた。それも、強く固く。
「・・・持っていた」
イヤ、まだ過去形では言い切れない。
様々な人の死に遭遇する度に、わずかづつ薄まってきているような気がするものの、今でもその価値観は根強く居座っている。

では、「楽しさ・楽しみ」とは何だろうか。
まず、誰もが分かるような表面的な快楽がある。
目に見えるモノを手に入れ、耳に聞こえる称賛を浴び、口にはうまいモノを入れる。
次に、自分にしか分からないような独自の楽しみもあるだろう。
個人的な趣味嗜好や空想など。
それから、自分でも自覚できないような、自分でも気づかないうちに感じている楽しさがあると思う。
実は、「真の楽しさ」とはコレなんじゃないかと思っている。

苦しみの中にある楽しさ、痛みの中にある楽しさ、悩みの中にある楽しさ・・・気持ちが楽しむのではなく、心(魂)に必要な楽しさってないだろうか。

blogにも何度となく書いてきたけど、私は典型的なマイナス思考人間。
楽しい気分を持ちにくい性質。
だから、誰もが分かるような表面的な楽しさには縁遠い。

だけど、
「俺ってツイてない男だ」
「俺の人生は不運だ」
等と思ったこともない。
私のようなネガティブ人間は、そのように考えることがあっても当然のことなのに。
まったくの個人的な考えだが、「運」とか「ツキ」なんてものは、運命・宿命の中にキッチリ組み入れられているもので、その良し悪しを自分が判断するものではないような気がしている。

三十数年前、私は何も持たずに裸で生まれてきた。
そしてまた、何も持たずに裸のまま死んでいく。
地にある、目に見えるモノは何も持って逝けない。

生きているいうちに味わう真の楽しみが、最期に空を高く駆け登る力になるような気がする。

 

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