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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

カウントダウン

特掃作業は、どんな現場でも終了予定時間を決めて、残りの時間をそれに向かってカウントダウンさせながら作業を進めていく。

作業内容は、汚染箇所だけの処理から家財・生活用品の撤去、果ては内装工事までと様々である。
数は少ないけど、家屋の解体にまで至ることもある。

家電製品を撤去処分することも日常茶飯事。
最近は、家電リサイクル法や環境問題とかがあって、なかなか手間がかかるようになっている。

また、直接、腐敗液が着いていなくても、部屋の内側や中にあるもの全てに悪臭が付着していることがほとんど。
家電や家具など、あまり臭いを吸収しなさそうな物にも、腐敗臭はバッチリついているものなのだ。

それでも、まだ新しい家電などは捨ててしまうのがもったいないので、遺族にできる限り持って帰るように勧める。
比較的、人気が高いのはAV関係・・・TV・DVD、オーディオ機器類。

その中でも、液晶薄型テレビとDVDレコードプレーヤーは人気が高い。
イケナイ状態でない限り、ほとんどの遺族が持ち帰る。

余談だが・・・
男性独居の場合、かなりの高い確率で、もうひとつのAVがある。
「独居男の悲哀」だ。
悲しくも共感できる男の性(さが)だが、家族(遺族)に発見されるのは恥ずかしいだろうと思うので、できるだけ目立たないように始末する。
ところで、そのAV(アダルトビデオ)だけど、最近はほとんどDVDだよね。
アダルトDVDは略して何て言うの?
AD?ADV?

やっかいなのはエアコン。
だだ、ブッ壊して外せばいいってものではなく、ガスを漏らさずきちんと抜き取らなければならない。
しかも、作業がしやすい所に設置されているとは限らない。
特に、室外機がポイント。
ベランダの宙吊タイプや高層階の外壁に設置されているようなタイプは、かなりやっかい。
高い所が苦手な私には、ツラい作業になる。
しかも、エアコンの室外機って、結構重いものなんだよね。

緊張するのは炊飯器。
中に何も入ってなければ問題ないけど、御飯が入ってると「朝飯前」とはいかない。
不思議なのが、御飯の腐り方がワンパターンではないこと。
オレンジ色に溶けているパターン、ガビガビに乾燥しているパターン、深緑のカビに覆われているパターンetc、色々ある。
人間の腐り方はワンパターンなのにね。

恐いのは冷蔵庫。
当然、中には食品が納まっている。
空の冷蔵庫なんて、滅多にない。
どんな冷蔵庫であっても、撤去処分するからには中を確認しなければならない。
扉を開けるときは、独特の緊張がある。

ほとんどの場合、中の食品は腐っている。それも、ヒドク。
最悪なのが、電気を止められた家の冷蔵庫。
それは想像を絶する状態。
ホワホワのカビ毛をまとった連中がいるかと思えば、墨で塗ったかのように庫内が真っ黒になっていることもある。
また、その臭いときたら、たまんない。
ボディにくる!ボディに。
呼吸の順番を誤ると、胃の中身が飛び出ようとする。

切なくなるのは時計。
どんな凄惨な現場でも、私がどんな状態でも、何事もないように単調に動いている。

現場で家財道具・生活用品を片付ける際にも、時計は最後の方までとっておくことが多い。
作業中、私自身が時間を見るためなのだが、人の生き死にに関わりなく次の秒を刻み続ける時計を目にするとき、時間の流れは誰にもどうすることもできないことを感じる。

「時間」と言う概念は、一体どこから来たのだろうか。
昨日→今日→明日、過去から未来へと寸分の狂いもなく過ぎていく法則は、何に基づいているのだろうか。
私は、そんな「頭がおかしくなったかな?」と思われても仕方がないような事を考えることがある。
(今までのblogからも、その片鱗はうかがえるでしょ?)

ちょっと空想の世界に飛んでみるけど、実は、誰も気づかないところに一人一人の人生時計があったりしてね。
未来に向かって単調に時を刻むのではなく、余命をカウントダウンしていく時計が。
そんな時計があったら、欲しいような欲しくないような。

平均寿命は、アテにならない淡い目安。
残された時間を意識するとき、死を意識するときに過ぎて行く時間のはかなさが分かってくる。

そして、いつも誰かのカウントダウンが数えられていることを覚える。

 

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