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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

痛(頭編)

私は、頭痛持ちではないが、色んな意味で頭が痛くなることが多い。
仕事の悩み、人間関係のストレス、お金の問題etc。
よく言うと繊細、わるく言うと軟弱な私だから。

頭痛の種って、頼みもしないのにいつの間にか撒かれているもの。
それが芽を出して、そのうち悪い実をつける。
早めに片付けないと、悪い実が新たな頭痛の種を落とす・・・その連鎖を繰り返していき、次第に追い詰められていく。
何事もイヤなことは後回しにしがちだけど、やはり頭痛の種は早めに片付けるように心掛けた方がよさそうだ。

ずっと以前にも書いた通り、私には霊感はない(はず)。
そしてまた、以前にも書いた通り、私は小心の臆病者である。

そんな私は、まだ会ったこともない(はず)のに幽霊・お化けの類は大の苦手。
心霊写真はもちろん、怪談やホラー映画ももってのほか。

それにしても、それらをそこまで苦手とする理由を自分でも分析できていない。
この状態を知る人は、
「そんな調子で、よくその仕事ができるな」
と、不思議に思うらしい。
その類を怖がるということは、その類の存在を信じているということになるのだろうか・・・???

そんな私でも、死体業を霊的に恐れることはほとんどない。
これもまた不思議なことだ。
特掃だってそう。
物理的な恐怖を覚えることは日常茶飯事ながらも、霊的な恐怖を覚えることはほとんどない。
その逆に、故人が残していった痕(身体の一部)に対する嫌悪感の奥に、親しみや情のような感情が湧いてくることの方が多かったりする(変?)。
「死にたくて死んだ人はいても、腐りたくて腐った人はいないだろう」
なんて思いながら。

死人がでたそんな現場を、やはり、一般の人は忌み嫌う。
自分でも何を恐れているのかハッキリと分からないまま、ほとんどの人が何かを恐れ嫌っているように見える。

そんな人達の中、親切な?依頼者(中高年の女性が多い)になると、清めの塩を持って来てくれる人がいる。
そして、その塩を除霊の意味で私にたっぷりフリ掛けてくれるのだ。
「悪霊退散!」と言わんばかりの気合を入れて。

「私は、霊とかは気にしませんから」
と丁重に断っても
「ダメダメ!ちゃんと清めとかなきゃ!アナタ、まだ若いんだから」
等と言って、容赦なく塩をフリ掛けてくる。
でも、こんな人の親切心は素直に嬉しい。
泥んこになった子供が母親に風呂に入れられるような気分・・・笑えるくらいに気持ちが和む。

霊能者という人がいるのなら、私はどのように映るだろう。
双肩には、シャレにならないくらいの多くの霊が乗っかってたりしてね。
とにもかくにも、私が祟られる必要がある人間なら、とっくにやられていてもおかしくはない。
しかしながら、加齢にともなう衰えはあるものの、お蔭様で今でもこうしてピンピンしている。
逆に、関わった死人の数が増えれば増えるほど、特掃魂に磨きがかかってパワーアップしてるような気さえする。

「全くない」と言えばウソになるけど、私は霊的なものを悪い意味では気にしないようにしている。
そんなこと気にしていたら仕事にならないから。
だから、自らが率先して清め塩や除霊・お祓いの類を用いたこともない。
清め酒はしょっちゅうやってるけどね。

そんな私でも、たまに妙な頭痛に襲われる現場がある。
決まって、右目奥の方が痛んでくるのだ。
この現象はもう何年も前からで、特掃より遺体処置業務に多い。
その頭痛は、何日にも渡って続くのではなくその日だけで治まるのだが、今までのケースを思い起こしてみても、原因について一定の傾向を見出だすことはできない。

私が、慈善事業やボランティアでこの仕事をやっている訳ではないことは承知の通り。
したがって、デリケートさが必要な作業もビジネスとして冷たく割り切っることも少なくない。
したがって、故人の意に沿わないこと、故人から顰蹙をかってしまいそうなこと等をやっている可能性も充分にある。
「酷い」「臭い」「汚い」「気持ち悪い」
等と言った失礼な発言や思いもあるし。
ただ、そういうことの反応として、頭痛が起こっているとは考えていない。

そんな頭痛を何度も経験している今では、
「霊的な何かがあるのかな?」
と思わないでもないが、結局のところその真の意味は分からない。
まぁ、知らないままでいい。

頭痛のない人生はない。
頭痛はあって当たり前。
「あ゛ー、頭が痛い」
ま、上手く付き合っていくしかなさそうだ。

それが、人生を少しでも楽しく過ごすコツのように思う。

 

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