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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

コラッ!

今日は大晦日。
2007年も今日でおしまい。
また一つ歳をとり、また一年死に近づいた。

毎度毎度、同じセリフを吐くけど、過ぎてみると時の移り変わりは速いものだ。
気づいたら、明日から2008年なんだもんね。

今年も、たくさんの人が死んで逝った。
病気・老衰・事故・自殺・・・男も女も、老いも若きも、富んだ人も貧しい人も。
数が多すぎて一つ一つを思い出すことはできないけど、あちらこちらにドラマがあった。
作り物ではない、真実のドラマが。
揺れる感情と波打つ鼓動を伴いながら、そんなドラマに私も関わってきた。
色んな故人・色んな人ととの出会いと別れに、喜怒哀楽があった。
それがまた、私の人生に味わいを与え、私の人格を鍛練してくれているのだろう。

また、昨年にも増して、今年の仕事は精神的にも肉体的にも過酷だった。
休養する時間もロクに取れず、精神疲労と肉体疲労を蓄積したまま今日を迎えている。
これが年々度を増してくることを考えると、頭が痛い。
それでも、食べていくうえで仕事は必要不可欠なものだから、やれるだけやるしかない。

そんな隊長にとって今回は二度目の年越しとなる。
「二度目?」
そう、「隊長」は実在の人物ながらも、blogの中にしかいない人間でもあるから、blogと同じで二度目の年越し。
「特掃隊長」なんてダサいニックネームは、軽い思いつきで名付けたもので、こいつはblogの外には存在していないのだ。

そして、隊長は、この一年も色んな目に遇い(遭い?)、色んな経験をしてきた。
多くの人の支えや励ましを受けながら、隊長はこの一年を乗り切ってきた。

この一年も、あちこちの出版社・編集者から、blog書籍化の打診があった。
正直言うと、「条件付きで、受けてみようかな」と思ったこともあった。
別に、欲(金)に目が眩んだわけではなく?、ちょっとだけ社会の陽にあたってみたくなったのだ。
日蔭暮しが長い隊長がそんな心境になるのは、そんなに不自然なことではないと思う。
しかし、そんなひと時の自己顕示欲を満たしても人間の質が上がるわけではない。
そんなことは、人格を高めるために必要なことではない。

しかも、書いている隊長に問題がないわけではない。
blogの中の隊長は読者に甘やかされ過ぎの傾向があって、知らず知らずのうちに自己を否定する謙虚さが欠けてきている。
人間、高慢・傲慢になってはいけないのに、人の善意に触れ続けると、ついついそっちの方へと傾いていってしまうのだ。
だから、たまには自分を見つめ直すことが大切。自分を否定する謙虚さと、さらにそこから強く立ち上がる力を養うことが必要。

大人になると、人に叱られることがなくなる。
愛情をもって叱ってくれる人がいなくなる。
しかし、自分を正すために人は叱られることが必要なときがある。
弱く愚かな生き物である人間は、己一人の力ではなかなか軌道修正ができないから。

隊長には書く自由・読者には読む自由があり、書き込みコメントも基本的には自由。
昔みたいに荒れるのはまっぴら御免だが、コメントの中身は自由。
なのに、公開・非公開を共通して、隊長が嫌悪され叱責・批難されることは極めて少ない。
ありがたいことに、目触り・耳触りのいいものばかり。

しかし、はたして、隊長は書き込みにイメージされるような男なのだろうか・・・疑問に思う。
・・・否!残念ながら違う。

blogに表れている隊長の人格は、私のほんの一面・一部でしかない。
実際は、いい年をして、隊長は手のかかる男。
なだめたりすかしたりして御機嫌をとらないとまともに仕事をしない。
また、本音と建前を使い分け、悲しみの依頼者に対しては偽善的な振る舞いで応対。
常に、楽して生きることと金のことばかり考えている欲深くで意地汚い人間。
感謝の気持ちは薄く、不平不満ばかりが頭を占有。
人の悪口は言うし、愚痴や弱音なんて口癖になっている。
しかも、やたらと気が弱く、何にやるにも腰が引けている。
そんな惨めな男なのである。

したがって、本blogは、ある種のノンフィクションでありながら、〝隊長が体裁のいいきれい事を吐いているだけ〟と言われても文句を言えない代物なのかもしれない。
そして、そんなふやけたblogを世に出したところで、皆が不快な思いをして隊長が恥をかくだけだろう。

何はともあれ、「それに気づいただけ少しはマトモな人間になってきたのかもしれない」と、わずかに安堵しているのも事実。

書籍化に気が乗らない理由は他にもある。
出版社・編集社からの口説文句はありきたり過ぎて、隊長の気持ちを溶かすだけの温度を持っていないのだ。
各社からの提案はとても上品でスマート、品格をともなわない隊長にはミスマッチ。
毎日毎日、目に見える汚物と目に見えない苦悩を相手に格闘している隊長は筋金入りのヘソ曲りなので、そう簡単に気持ちは反応しないのだ。

結局、書籍化の話は全て辞退して本年を終えようとしている。

まぁ、何はともあれ、今年一年を生き通せたことに感謝だ。
必然の死に向かって生きることの奇跡に深い感慨がある。

昨日までは特掃に出たけど、幸い?大晦日の今日は現場仕事の予定はない(〝今のところ〟だけど)。
そんな今日、私は隊長の一年を振り返る。
他人が立ち入れない世界に生きている隊長を真に叱れるのは私しかいないのかもしれないから。

「コラッ!」
自分を叱る心の声を持てたら、それは素晴らしいこと。
正月を前に、「めでたい!めでたい!」と浮かれてばかりいないで、年の終わりくらいは一年を振り返り、自分と真に向き合ってみるものいいかもしれない。
そして、自分で自分を叱って励ましてみるといい。

新しい年を新しい自分で生きるために。

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