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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

弱肉強食

弱肉強食は何も野生動物の世界に限ったことではない。我々人間界にもある。

一時、「勝組・負組」という言葉が流行った。
それが意味する勝敗の基準は、ほとんど社会的地位と経済力だと思う。その基準では私は完全に負組だ。その自覚もある。卑屈になって諦めている訳ではなく、現実は現実として。

でも、とにかく、自分には負けたくない。非常に漠然とした抽象的な言い方だが、勝敗は自分で決めるもの、自分で分かるもの。
(無意識のうちに読者ウケを意識してしまうのか、最近、自分なりの精神論(時に「きれい事」とも言う)を吐くことが多くなってきたかも・・・イカン、イカン。)

 

本題に移らねば。今回はハエ戦記。

ハエの世界にも勝組と負組がある。何度も記しているように、腐乱現場にいる生き物と言えばウジとハエと、そして私。三者仲良くしてる訳にもいかず、争いごとが嫌いな温和な私でも避けられない壮絶な?戦いを強いられる。

ハエ軍は大して苦戦しない。窓を開けるまでは無数のハエがブンブン飛び回る中に入っていかなければならず、多くのハエが容赦なくたかってくるが、一旦窓を開ければ勝手に飛び去ってくれるからだ。

強敵なのはウジ軍だ。かつては市販の殺虫剤(ウジ殺し)を使ったこともあるが、本当にウジを殺す威力があるのか疑いたくなった。薬をかけてもかけてもウジ軍は動きを止めず勢力範囲を広げてくる。しかも、見た目が気持ち悪い。

結局、最終的には手作業で掻き集めてポイするしかないのだが、あのムニュムニュした感触は何度触っても気持ち悪いし、とにかく一匹一匹が拾いにくい。

さて、ウジ・ハエ業界の勝組になりやすいのハエである。
腐乱現場で彼等の食料になるのは、ご想像の通り腐乱死体である。人間一人分の身体があれば、しばらくの間は相当豊かな食生活が送れるはず。しかも、その間、蝿はウジをどんどん産んでいき、ウジはどんどん増えていき、ウジはどんどんハエへと羽化し、羽化したハエはまたウジを産んでいく・・・その増殖連鎖が繰り返されながら、腐乱死体は固体から液体へと変化していくのである。

現場のウジ・ハエの大きさ・量も死体の死亡時間を算出する材料になることは比較的よく知れた話だと思う。

しかしだ、彼等にとってせっかくの御馳走も、いきなり警察が現れて持っていってしまうと、彼らも途端に食料難に陥ってしまうのである。

それでも、力のある者(機動性に優れたハエが中心)は部屋の中の残飯や何かをあさって食いつないでいく。しかし、やはりそれにも限界がある。幼いウジを筆頭に次第に餓死する者が発生してくる。餓死したウジは乾燥して茶色く変色し、サクサク系のお菓子のようになる。腐乱経過日数が多い現場だと、そんなのが無数に床に転がっている(と言うか、敷き詰められている)ので、踏まずには仕事にならない。踏んだ感覚は、サクサク・パリパリと何とも言えない軽快な?音がする。

さて、そのうち、力尽きたハエもあえなく落下死亡。それも無数の数。ホウキで掃き集めると小山ができるくらいの量になる現場も数多い。

ハエと言えども、最後に残るのは本当に強い奴だけ。
最後の最後まで生き延びたハエを殺虫剤で殺すのは容易いことなのだが、

「一寸の虫にも五分の魂」、

窓を開けて逃がしてやる・・・と言うか邪魔だからとっとと追い出す。

かくて、腐乱現場では勝組として生き残ったハエ達は再び活躍できる場(食料を求めて)世間に飛び立って行くのである。しかし、外界でも勝組になれるとは限らない。外の世界は外の世界で、多くの敵が潜んでいるはず。虫を食べる鳥類とか。それでも、彼等は次の糧を求めて必死に生きているのである。
話が脱線するが、ウジとかハエって、結構偉いかも。誰もが嫌う腐乱死体や生ゴミ・残飯・ウ○コに対して何の抵抗もないと言うか、好んで集って行くんだから。ある意味、私と同類かも(苦笑)。

生きていくことが楽なことばかりじゃないのは、人間もハエも同じこと。
どこかで黒光りしているデカイ蝿を見かけたら、思い出して欲しい。

「こいつらは頑張って生き残ってきた勝組なんだ」

と。・・・

ただ、それで自分が元気づけられるようだと、ちょっと問題があるかもね。

 

さぁてと、今日もハエにたかられに行ってくるか!
んじゃ、行ってきま~す。

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