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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

最期の晩餐

ある男性が自殺した。
中年というにはまだ若い年齢。例によって、腐敗した状態で発見。
高級とまではいかないが、新築の賃貸マンションの一室だった。
今は亡きこの部屋の主人は、まだそこへ入居して2~3ヶ月しか経ってないらしく、部屋の荷物は全体的に少なく、最低限の生活必需品があるだけ。
しかも家具や家電製品はほとんど新品状態で、捨てるのはもったいないくらいだった。

裕福そうな暮らしぶりが想像でき、

「なんで自殺なんかしたんだろう」

と、いつも通り溜息まじりに思った。内心では、その疑問を故人に投げかけながら。
どうしてか、自殺現場に入ると、知らず知らずのうちに溜息がでる。
その溜息には色々な意味が混ざっている・・・悪臭、おぞましい光景、それを片付ける作業、そして自殺という事実。

離婚した元妻との間には子供もおらず、血縁者といえば遠い親戚くらいしかいなかった。
若い時から意味もなく職を転々する癖があったらしく、昔から経済的に裕福な暮らしはしていなかったと言う。その親戚も、少なからずお金を貸したこともあったそう。
しかし、「ここ最近は、頻繁に旅行に行ったりして、結構羽振りがよさそうで、少し不思議に思っていた」とのこと。

私は探偵ではないので、興味本位で話ばかり聞き込んでも仕方がない(悪い癖だ)。
とにかく、清掃作業に入った。
作業をやっているうちに、あることが見えてきた(所詮、想像の域は越えないのだが)。

故人は、自分の人生は自殺で閉じようと、しばらく前から計画していたのではないか。
ポストや部屋には、消費者金融からの請求書・催促状が大量にあった。
その枚数もさることながら、

「よくもここまで借りれたもんだな」

と感心する程の数の金融会社があった。
手当たり次第に金融会社を見つけては、借りられるだけ借りまくったようだ。
そして、金と命が尽きる時期を合わせて、自殺する計画を立てていたのではないかと思われた。
負けてばかりの人生、その最終回で劇的な逆転満塁ホームランを放つつもりだったのかも。
あの世でヒーローインタビューを受けるつもりで、自分で残りの人生を定め、そのお金を使って楽しめるだけ楽しんだのか。
もちろん、何ヶ月か後に死ぬつもりの人間は物を買うなんてことはせず、主に、飲食や旅行(女遊びも?)等に浪費していったのだろう。
本人は、本当に満塁ホームランを打つことができたのだろうか。
また、それでも楽しかったのだろうか・・・自分勝手な想像なのに、考えると暗くなった。

私も若い頃は、「人生は楽しんでなんぼのもん!」「楽しまなきゃ損!」という価値観を持って生きていた。「お金があれば何だってできる」と思っていた。
だから、現実がその逆になると、自分でも6月23日掲載「死体と向き合う」で書いたようなことになるのである。

もちろん、今も色々な楽しみを優先したいし大事にしたい気持ちは強い。
ただ、若い頃と比べると明らかにその質は違う。
第三者には、「負け犬の遠吠え」みたいに聞こえても仕方がないけど、相田みつを氏の言葉を借りて「自分の幸せは自分の心が決める」とでも言っておこうか。

今、私が大切にしたいのは笑顔。
決してプラスティックスマイルなんかじゃない、自然にでてくる自分の笑顔、人の笑顔。
笑顔で生きるって平凡なことかもしれないけど、案外、難しい。
しのごの考えるのは止めて、まずは笑顔・笑顔!
私のくだらないジョークにもグロイ話にも、しかめっ面しないで、笑顔・笑顔!(笑)

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