Home特殊清掃「戦う男たち」2006年分お化け屋敷(前編)

特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

お化け屋敷(前編)

人それぞれに怖いもの(苦手なもの)を持っていると思う。
私の場合は、高所・蛇・歯医者・お金・心霊写真・暗闇etc。

当然、この中に死体は入らない。
気持ち悪いことはあるけど、恐くはない。
どちらかと言うと、道端に転がっている動物の轢死体の方が苦手。いつも目を背けて通り過ぎてしまう。

逆に、一般の人にとって人間の死体は上位にランキングされるものらしい。
その理由の中核を探ってみると面白いことが発見できるかもしれない。
やはり人は、死をイメージさせたり感じさせたりするものを根本的に嫌うのである。
葬儀習慣に限らず一般世間の習俗や慣習にも、それを感じさせるものが多い。
その延長線上には死からの逃避願望があり、やはり死ぬことは恐くて考えたくないものなのだろう。

ある日の夕方、特掃の依頼が入った。
「できるかぎり早く現場を見てほしい」とのこと。
何の仕事が入るか分からないので、昼間の予定はできるだけ業務用に空けておきたい私は、その日の夜に行くことにした。
「鍵は開いているので、勝手に入っていい」とのことだったし。

現場に着いた頃は、外はもう真っ暗。
目的の家は老朽狭小の一戸建。
電気は止まっており中も真っ暗、懐中電灯を照らすしかなかった。
庭には、手入れをしてない木々がうっそうと茂り、外灯の明かりもなく、淡い月明かりが不気味さを照らし出していた。

玄関の前に立っただけで、いつもの腐乱臭を感じた。
自分で自分を脅しても仕方がないので、余計なことを考えないようにして玄関ドアを開けた。
それから、誰もいるはずのない家に、いつもの様に「ごめんくださ~い」と言いながら入った。

狭い屋内は、ゴミなのか生活用品なのか分からないような物が散らかっており足の踏み場もないくらいだった。
腐敗箇所をいち早く見つけて汚染具合を確認。
まぁ、腐乱死体現場としたら並のレベル。
ウジはいたけど馴染みのハエは二軍落ちし、その代わりに蜘蛛の巣と蚊がまとわりついて弱った。

廃棄するゴミの量もキチンと把握しなければらないので、建て付けの悪い押入も開けてみた。
そこで思わず「あ゛ッ!」
暗闇の中に人の首・・・押入の中には頭部だけのマネキンが並べられていた。
「なんでこんなもん持ってをだよ!ドリフのコントじゃないんだから、こんなもんで脅かさないでくれよぉ」
心臓の鼓動か静まらない私は、勢いよく戸を閉めた。

そのうち、どこからか「キィーキィー」と泣き声のような音が聞こえてきた。
「ドキッ!」、心臓は再び高鳴り始めた。
気のせいにして無視しようとしたけど、確かに聞こえてくる。
放っておく訳にもいかないので、嫌々その音(声)がする方を探した。
それは流し台の収納スペースから聞こえていた。
思い切ってその戸を開けてみた。
そこで思わず「あ゛〓ッ!」
いくつものネズミ獲り(粘着シート)に無数のネズミがかかってもがいていたのである。
中にはもう死んで腐ってるのもいて、それはそれは悲惨な状態。
「見なかったことにしよう」
全身鳥肌の私は、機械的に戸を閉めた。

一階を見分し終えて、次は二階。
脅され過ぎか気の張り過ぎか、心身ともに疲れてきて、身体にも力が入らなくなっていた。
「もう少しの辛抱」と、暗くて狭い急階段の上を見上げた。
そこて思わず「あ゛〓〓ッ!」
あまりのことで悲鳴は声にならなかった。
なんと!宙に浮いた人の顔が、ジーッと私の方を見ていたのである。
そして、その顔が私に・・・

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