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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

冷たいヤツ

人の身体は死んだ瞬間から腐敗を始める。
死後1~2時間程度でも既に腐敗臭がするようなケースも珍しくない。
その腐敗開始の早さは驚きものだ。

一般的に、遺体は腹(内蔵)から腐り始めると言われている。
私の実体験でもそれに違いはない。
一見、何ともなさそうな遺体でも、着衣を取ったら腹部か濃緑色に変色していることがよくある。
そして、それが次第に広がってくる。
もちろん、遺体が置かれる環境・施される処置によって腐敗スピードは異なるため、その腐敗速度を少しでも遅くさせるために手を尽くすことも、我々の仕事の大きな役目である。

遺体は火葬まで冷蔵されるのが一般的。
霊安室の冷蔵庫で保管されることもあるが、それよりドライアイスを当てられて冷やされることの方が多い。

冬場だとドライアイスは10kgもあれば充分、しかし、今のような夏場は10kgでは足りず20kgや30kg使うこともざらにある。
それだけ、遺体に暖は禁物ということ。

しかし、あまり冷やし過ぎると、身体が小さく痩せている老人などは全身が凍結していることもある。
身体や気温に合わない量のドライアイスを当てるとそうなる。
全身カチンコチンになった遺体は、頭だけ持ち上げようとしても首は曲がらない。
身体ごと持ち上がってしまい、見るからに不自然。

でも、ここまでやれば腐敗スピードをかなり落とすことができる。
あとは遺族の心象にどう映るがが問題。
遺族は「死後硬直」だと勘違いしていることが多く、雰囲気によっては私もあえて説明しないことが多い。
少々腐ってもいいのか、それより少々冷やし過ぎの方がいいのか、判断が分かれるところだ。

しかし、こうも暑いと自分にドライアイスを当てたくなる。
若かりし頃の夏、あまりに暑かったのでドライアイス用の冷蔵庫に頭を突っ込んだことがある。
先輩から首根っこを掴まれて、「バカ野郎!死にたいのか!」と怒鳴られた。
ドライアイスは二酸化炭素の塊で、そんなことをしたら中毒(酸欠)死しかねないらしい。
危なかった・・・無知は恐い。

それにしても、人間が死んだら腹から腐り始める事実を、私は妙に納得している。
ひょっとしたら、人の「腹」は生きているうちから少しずつ腐っているのかもしれない?
そして、そんな人が「冷たいヤツ 」と呼ばれるのかもね。

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