特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分
特殊清掃「戦う男たち」
ロールケーキorサンドイッチ
腐乱死体が布団を汚していることは多い。
言い換えると、布団に入ったまま亡くなる人が多いということ。
そんな場合は、ほとんどの依頼者が「布団だけでも先に持って行ってくれ!」と依頼してくる。
腐敗液をタップリ吸った布団は、見た目も臭いもとてもヒドイから。
できる限り依頼者の要望には応えるようにしているが、見積と作業は別物。
作業を小刻みに分けると、効率も悪くコストも上がる。
何よりも、汚物処理作業は一発で済ませたい。
でも、困りきった様子で依頼してくる依頼者も無視できない。
昔は、そんな現場は仕方なく作業をしていた。
依頼者には悪いが、嫌々やっていた。
普通の布団をたたむのは誰でもわけないことだが、汚腐団(お布団)はそういう訳にはいかない。
できるけ小さくたたんで専用袋に入れるだけ作業なのに、ちょっと油断すると腐敗液が身体に着いてしまう。
以前は、腐敗液が身体に着かないように作業手順をよーく練ったうえで、慎重に慎重を重ねてやっていた。
まさに、汚いモノにでも触るかのように。
それでも、なかなかうまくいかず、身体を汚してしまったことが何度もある。
その逃げ腰・及び腰の姿勢が逆効果であることに気づくのは、しばらく先になった。
何度もやっているうちに、一つの失敗が一つのノウハウになることを覚えた私は、「どうせ汚れるんだったら失敗例を蓄積しよう」と考え方を変えた。
皮肉なことに、汚いモノが着かないように気をつけていた頃に比べると、汚いモノを気にしなくなってからの方が圧倒的に汚れなくなった。
腐敗液をタップリ吸った布団は重い!もちろん臭くもある。
持つとズシリとくる。
実際の重さに増して精神的な重さがある。
私より腕力のある人でも、そう簡単には持てないかも。
昔は、梱包した布団でさえ汚く思えて、身体につかないように持っていた。
今は、抱えるどころか背負うことにも抵抗感はない。
それを背負うと、遺体そのものを背負っているような錯覚に陥る。
そんな布団に対する私の感覚は、汚物と人間の間を行ったり来たりする。大袈裟に言うと、汚物に親近感みたいなものを覚えることもある。
ただ歳をとっているだけじゃなく、人間として成長しているのかも?
仕事も人生も、楽をしようとして近道を行くと、かえって遠回りになってしまうことがある。
身の丈を考えず階段を飛び越えようとすると、踏み外して転げ落ちることがある。
何事も、小さな積み重ねが大事。
続けることが大事。
知恵を持つことが大事。
こんな仕事にも独自のノウハウがある。
それを得るためには経験・継続・蓄積が必要。
私には、誰にも真似できない(したくない?)それがある。
死体業をコツコツやってきたことが、ホコリのような私の誇り・・・かな?
今回は、とりとめもない文章になってしまった。夏バテ気味か・・・。
表題の「ロールケーキorサンドイッチ」は、汚腐団のたたみ方のコツ。
中に入る具は色々あるが、読者の想像にお任せする。