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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

うにどん!

「食欲増進の巻」

私が初めてウニを食べたのは大人になってからである。
「美味!」と聞いていたウニは、私にとっては生臭くて食感も悪く、とても美味とは言えなかった。
美味しく感じなかった一番は原因は、食べ慣れていなかったせいかもしれない。
でも、何度か食べているうちに少しづつ味が分かってきて、だんだん好きになってきた。
今は、「大好物」とまではいかないけど好物の一つになっている。

そんな私は長い間ウニ丼に憧れを持っていた。
それまで、私の口に入る ウニは回転寿司の軍艦巻程度。多分、安物。
「テレビのグルメ番組にでてくるようなウニ丼を一度は食べてみたいなぁ」と、ずっと思っていた。
東京でも数千円だせば食べられるのだろうが、馴染みの寿司屋なんかない私には、美味しいウニ丼がありそうな寿司屋に飛び込む度胸もなく、結局いつまで経っても食べられずじまいだった。

二年程前になるだろうか、そんな私にウニ丼が食べられるチャンスが巡ってきた。
親しくしている人に海の近くの寿司屋に連れて行ってもらった時だ。
酒が入っていたせいもあるのだろう、ウニ丼に対する想いを熱く語ってしまった私。
カウンター越にそれを聞いていた板前が、「ウニ丼、出しましょうか?」「うちのは自慢のウニですから」と言ってくれた。

板前は、店のメニューにはないウニ丼を、わざわざ私のために作ってくれたのだった。
目の前に出て来たウニ丼は、私が期待していた通り、鮮やかな黄色で一つ一つが大きくホッコリしている。
決して溶けだすようなことはなく、表面のツブツブ感もしっかりあった。
私がいつも食べているような軍艦巻ウニとは大違い。

それを見て、増々テンションを上げた私。
テレビのグルメリポーター張りのオーバーリアクションでウニ丼を一気に掻き込んだ。
その食感はシッカリとあり甘味もコクも格別、本当に美味かった!

積年の望みを果たした喜びとウニの甘味がプラスされて、何とも言えない幸せなひと時だった。

一度食べればもう満足。
今は、ウニ丼への熱い想いは落ち着いている。

 

「食欲減退の巻」
場所は、寿司屋ではなく風呂場。

浴室のいたるところに付着している焦茶色の腐敗液と、あちこちに貼り着いている皮が、警察の遺体回収が困難を極めたことを物語っていた。
特に、浴槽の側面に垂れたまま乾燥していた腐敗液は視覚的にグロテスクだった。

浴槽の中を覗いて見ると、底に何がが溜まっている。
皮とウジは分かるものの、あとは何なのか判別不能だった。
まぁ、人体の一部の末路なんだろうが。

幸いなことに排水口は詰まっていなかった。
風呂やトイレの場合、排水口が通っているか詰まっているかは私にとっては天地の差がある。
通っていると俄然やる気がでてくるし、詰まっていると意気消沈してしまう(意気地がない?)。
始めに固形物を除去。
皮・髪・ウジ、そして得体の知れないモノ。
皮と髪は浴槽に貼り着いており、削り落とした。
大量のウジは一匹一匹を相手にはしていられない、まとめて掬い取るしかなかった。
それらはまとめて汚物容器に。

そして、私は得体の知れないモノに手をだした。
表面は茶色、固いモノだと思って道具を当てたら中からドロッと黄色い半液体がでてきた。

「何だこりゃ?」
「なかなか珍しい色だなぁ」
と思いながらそれも容器に取った。
ウジ山はその汚物に隠れた。

固形物を取り除いたら、あとはひたすら戦場・・・いや洗浄。
排水口が通っているということは水が流せるということで、気持ちいいくらいにきれいできた。

さて、最後に廃棄物のチェック。
私が汚物容器に見たものは、そう・・・。

いつかまた、美味しいウニ丼を食べたい。
頑張って仕事しよう。

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