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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

寝込んだネコⅡ

猫という動物は、好む人と嫌う人がわりとハッキリ分かれる動物ではないだろうか。
私は、猫より犬の方が好きだ。
もっとも、犬猫より牛(Beef)・豚(Pork)・鶏(Chicken)の方が好きだけど。

8月21日「飼猫とサラリーマン」の続編。
私は猫の死骸を片付けるため、再び現場に行った。

依頼者は、「気持ち悪くて、とてもネコの死骸を見ることができなかった」と言う。
ただ、私が伝えたその場所に近づくと異臭がするので、死骸の存在を感じたらしかった。

家の裏、陽当たりの悪い狭いスペースにネコの死骸はあった。
私が初めに発見したままの状態で残っていた。
そして、その腐乱臭は人のそれと酷似していた。
ただ、それが屋外だったことと、ネコの身体は小さいことが幸いして、そんなにキツい臭いではなかった。

ネコは、骨だけ残して完全に溶けていた。
これも人と同じ。
違うのは、体毛の有無。
言うまでもなく、ネコの全身は毛で覆われている。
人間でも、体毛の濃い人はいるだろうが、ネコの比ではないだろう。

地面のコンクリートに、溶けかかった毛皮がへばり着いていた。
そして、細かい毛には小さなウジが絡みついていた。

「やっぱ、ここにもいたか」
「まったく、たくましいヤツらだ」
ウジに対しては、嫌悪することより感心することが多い。

精神的に重かったのは、頭部。
眼球がなくなり、歯も剥きだしになっている頭蓋骨が、溶けかかったクサ~イ毛皮に覆われているような状態。
特に、眼球がない様が不気味さを増長させていた。
逆に、眼球だけがシッカリ残っていたら、そっちの方がもっと怖いけど。

私は、その状態をしばし観察してから、死骸の片付けに取り掛かった。
人間に比べてはるかに小さいネコ腐乱の処理は楽なものだった。

一つ一つの骨を拾ったりもせず、スコップですくった。
「小さい」と言っても、一発ですくい取ることはできず、何度かに分けて少しずつすくった。

頭部をすくう作業は、やはり鳥肌モノ。
胴体から外れた頭は、スコップの上でゴロゴロと不安定に転がった。
刺激的なその様からは、おのずと視線を逸らさざるを得なかった。

死骸をきれいに除去した後の地面(コンクリート)には、濡れたような痕が残った。
ネコの腐敗液・腐敗脂が染みついていたのだ。

今後のことにも影響するので、これをどうするかを依頼者と相談した。
すると、依頼者から意外な相談を受けた。
「ネコの死骸を庭に埋葬して欲しい」
「この家は故人の持ち物だし、しばらくは誰も住む予定もないし」
「故人も可愛がっていただろうし、ネコも故人を慕っていただろうから」
との優しい配慮だった。

ただ、埋める場所は私に任せるので、依頼者には知らせなくてもいいとのことだった。
「埋めた場所を知りたくないとは・・・」
依頼者は、単なる優しさだけではなく、ネコや故人の祟り的なものを恐れているようにも感じた。

何はともあれ、埋葬できることは私にとっては嬉しいこと。
庭の一角に適当な場所を見つけて、できるだけ深く穴を掘った。
そして、ネコを丁寧に埋めた。

気持ちもスッキリと、この現場を終えることができた。

私は、猫より犬の方が好きだ。
ただ、これは飼主の立場で考えた場合。
飼われる立場だったら、何事も従わされる犬より自由気ままが許される猫の方がいい。

飼うなら犬がいい、飼われるなら猫がいい。
自分は猫でいたいけど、回りの人間には犬でいてほしい・・・こんな人間関係に心当たりがある人は多いんじゃない?

そんな事を言いながらも、「お手」と「お座り」はシッカリできるように仕込まれて大人になった私。
ただ、残念なことに、尻尾をふるのが下手クソなんだよねぇ。

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