特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分
特殊清掃「戦う男たち」
変身
子供の頃、私の回りには多くの変身ヒーローがいた。
ウルトラマン・仮面ライダー・ゴレンジャー・キカイダーetc
ちょっとマイナーな者を含めると、もっとある。
ちなみに、私はそっち系のマニアではない。
彼等は、何故か窮地に陥るまでは変身しないで戦う。
そして、やっと変身したかと思うと、いきなりパワーアップ。
必殺技を繰り出して大逆転。
悪者を倒して一件落着。
毎回、「もっと早く変身すればいいのに」と思いながらも、お決まりのストーリーにのめり込む幼い私だった。
その他にも変身が得意(好き)な人達がいる。
「女性」だ。
女性は、持ち物や服装等によって見事に変身する。
その最たるものは化粧だろう。
全ての女性に当てはまる訳ではないだろうが、before.afterでは、とても同一人物とは思えないくらいの変身を遂げる人がいる。
自分の顔に化粧を施して変身するということは、ハイレベルな技術を要すると思われる。
また、凝り過ぎの化粧が、変身効果をマイナスに逆行させているような人もいる・・・汗をかいてパンダ顔になっている人とか。
・・・セクハラになるので、このネタはこの辺でやめておこう。
ま、女性の変身ぶりには感心するということだ。
まだ他にも、スゴイ変身ができるヤツがいる。
ウジ→ハエだ。
ある腐乱現場。
散らかった部屋の中央に、生々しい汚腐団があった。
「こりゃまたヒドイなぁ」
死体+布団+時間=汚腐団
なかなか完成度の高い汚腐団だった。
原則として、現場初見(見積)と特掃作業は別々の日に行うもの。
しかし、この現場では依頼者の強い希望で、汚腐団だけは直ちに梱包することになった。
汚腐団は、腐敗液で真っ黒に染まっていた。
敷布団をメインに、肌掛・毛布・掛布団まで汚染済み。
端を持ち上げただけで、布団とは思えないズッシリとした重量感。
目にも腕にも、腐敗液をタップリ吸っていることは明白だった。
当然、大小のウジがウヨウヨ。
無数のウジが、いくつかの大きな塊をつくっていた。
個々のウジを相手にしていてもラチがあかないので、私は、そのままの状態で汚腐団をクルクル巻き巻きして袋に入れた。
滴る腐敗液に「ヒェ~ッ」、漂う腐敗臭に「オェ~ッ」。
高濃度の腐敗ガス(メチャクチャ臭い!)を防ぐため、袋は完全密閉。
翌日の特掃作業で撤収するつもりで、その汚腐団袋は部屋の隅に置いておいた。
翌日の朝。
特掃の装備を携えた私は、現場に入った。
そして、前日に梱包しておいた汚腐団の袋を見て驚いた。
袋の内側を、無数のハエが黒く埋め尽くしていたのだ。
「お゛ーっ!なんだ?このハエはーっ!」
しばし頭が混乱。
昨日の時点では、袋の中にハエなんていなかった。
そして、完全密閉状態の袋には、外部からハエが進入できるはずもなかった。
しかも、現実には大量のハエが袋の中にいた。
前日、私が梱包した汚腐団には、大量のウジが暮らしていた。
そのウジ達が一晩でハエに羽化したのか・・・そうとしか考えようがなかった。
汚腐団の中は、ウジにとっては食べる物にも寝るところにも不自由しない快適な環境。
スクスクと成長したとしてもおかしくはない。
しかし、その成長スピードには目を見張るものがある。
前日の午後から当日の朝まで、24時間は経っていない。
正味、たった十数時間でウジは立派な?ハエに変身した訳だ。
んー、凄過ぎる!
ウジの変身パワーに、驚かされるばかりだった。
前段で女性の変身ネタを書いた。
では、男性はどうだろう。
自分より力のある人にはペコペコ、自分より弱い者には横柄に大威張り。
こんなのも、一種の変身かも。
TVヒーローや女性と違って、格好悪い変身だね。