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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分

特殊清掃「戦う男たち」

飽食の陰でⅠ

私は、食欲旺盛だ。
昔から早食いの大食い。
経済的な事情から、たいして上等なものは口にしていないけど、毎日おいしく御飯を食べている。

食べ物が美味しく食べられるのは幸せなことだ。
不自由なく食べることって極めて当たり前のことのようで、よく考えるとそうでもないことに気づく。

まず、お金がないと食べ物は買えない。
お金を得るには仕事が必要。
また、いくらお金があったって、買える食べ物がなければ仕方がない。
食べ物があっても、食物を受け入れる身体(健康)がなければどうしようもない。
また、健康って、精神と肉体の両方でないてダメなもの。
そう考えると、毎日の食事が美味しく食べられることがどんなに貴重なことであるかに気づかされる。

更に、酒や甘味まで味わえる私は幸せ者だ。
酒が美味しく飲めるときは心身ともに調子がいいとき。
五臓六腑に浸み渡るアルコールが、もらい腐りした脳をリセットしてくれる。
また、酒に対する味覚が健康のバロメーターにもなっている(肝臓くんだけが一人静かに泣いている?)

私は、更に甘味にも目がない。
洋菓子・和菓子、何でもOK!・・・(あ!最中や甘納豆など、凝った和菓子は苦手だった)。
5号サイズのラウンドケーキなら一人でペロリといってしまう。

「ミルクレープ」ってケーキがあるでしょ?
アレを初めて食べたのは30歳くらいの時、人に連れられて行った銀座のケーキ屋だった。
フォークが入っていく感触が何とも言えず心地よく、一口食べると「なんだこりゃ!?」。
食べてビックリ!、その舌触りと旨さに心を動かされた私だった。

店は違えど、それから何度かミルクレープを食べているが、いつも三角にカットした小さなもの。
いつか、円いラウンド状態のままを思いっきり食べてみたいものだ。
それが、私のささやかな(バカな?)夢。

食い意地の張った私には食い物の話は尽きない。
ただ残念なことに、舌に美味しいものは身体に悪いことが多い。
脂肪・糖分・塩分・アルコールetc
こんなんじゃ、将来は、ロクな病気にはならなそうだね。

食べ物が豊富にある現代の日本で、意外な死に方をする人がいる。
どんな死に方って?
冷たい言い方だけど、事故死や自殺は珍しくも意外でもない。

答は、餓死だ。
にわかに信じ難いかもしれないが、現代でも餓死する人がいるのだ。
色んな人の色んな死に携わっている私でも、餓死には驚く。
豊食による病気で逝く人が数知れない中で、ひっそりと餓死者もいるのだ。

そんな現場では、「なんで?」と思ってしまう。
一体、何が人を餓死に追いやるのだろうか。
貧困か・・・
将来の悲観か・・・
プライドか・・・
それとも、餓死も自殺手段の一つなのか。

餓死者がいた部屋だからといっても極貧の雰囲気はない。
もちろん、お金持ちの雰囲気はないけど、一通り家財道具・生活用品は揃っている。
腐乱汚染も例の通り。
「どうして・・・」
ホント、不思議なせつなさを覚える。

何年か前、幼い子とその母親が餓死遺体で発見されたというニュースがあった。
かすかな記憶によると、その家には食べかけたのカップラーメン以外に食べ物はなかった。
母子は名前も分からず身元不明。
このニュースを聞いた私は、もの凄くせつなくなった。
薄っぺらい同情心でしかないけど、複雑な悲しさがあった。
母と子、どちらが先に息絶えたのか知らないけど、どちらにしろその状況を想像すると堪え難いものがある。

格差社会、低所得者層の増大が取り上げられる中で、日本でも餓死者が増えていくのだろうか。
過剰な接種カロリーに悩む大多数の日本人の陰で、誰にも気づかれることがなく。

「昼飯は何を食べようかな?」
「夜は何をツマミに飲もうかな?」
なんて、呑気に考えられる日々に飽食の陰を見る私である。

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