特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2006年分
特殊清掃「戦う男たち」
憂鬱
あー、憂鬱だ。
私にとって、年末年始は一年を通じて最も憂鬱な時期かもしれない。
クリスマス・正月、この時期の世間は華やかなお祭ムードが続く。
何がめでたいのかハッキリ分からないまま、お祝いムードが続く。
都内をよく走る私は、お洒落にライトアップされたホテルや町並みを毎日のように目にしているのだが、それがやたらと眩しく見える。
こっちは、汚れて臭い身体で汚れて臭い荷物と一緒にドライブしているわけで・・・「俺には縁のない世界だな」と、何とも言えない溜息ばかりをついている。
今更、寂しいわけでもないし、惨めなわけでもない。
でも、何となく気分はブルー。
今はこんなでも、子供の頃は冬休みが大好きだった。
自分にとって、特に何があるわけでもないのに、世の中がHappy一色の雰囲気になるのが好きだった。
では、いつ頃から年末年始を憂鬱に思うようになったのだろうか。
多分、それは死体業を始めてからだ。
年柄年中、人の不幸に関わっているこの仕事には、お祝いムードは合わない。
年柄年中、「御愁傷様です」と頭を下げ、辛気臭い面持ちで仕事をこなす私は、お祭りムードを持ちようがない。
仕事とプライベートをクッキリと区別すればいいのかもしれないけど、現実は、なかなかそうもいかない。
プライベートが仕事に侵されたり、またその逆だったりと。
まぁ、私の場合はプライベートが仕事に侵されていることがほとんどだ。
その典型が休日数にある。
一般企業だと、年間休日数は110日~120日くらいだろうか。違う?
私の場合は、それを大きく下回る。
これは、20代後半の頃の話だけど、一年間の休日が28日だった年もある。
ある年の暮れ、「今年はよく働いたなぁ」と思いながら、スケジュール帳を遡ってみたことがあった。
すると、当年に取った休暇数が28日だったのである。
「たった28日?ひと月に2日余か・・・」
その数を知って、我ながら驚いたものだった。
若くて心身が軽かったからできたのだろう。
しかし、今年も、春ぐらいからそれに近いペースで仕事をしている。
さすがに、この歳になると結構疲れる。
夏の盛りに、現場アパートの階段の昇降を繰り返したときは、水をかぶったような汗がでてブッ倒れそうになった。
階段下の日蔭にうずくまった私は、地面に落ちる汗に色々なことを思ったものだった。
「これも俺の宿命だ!修業!修業!」
そう言う今も、バカの一つ覚えのように「疲れた」「疲れがとれない」と愚痴ってばかりの日々だ。
そんな死体業には、年末年始も休みはない。
人が死ぬのに、クリスマスや正月は関係ない・・・はずたからね。
余談だが・・・
「病院の延命措置と世間の大型連休は相関している」といったブラックな噂はよく聞く。
「病院職員が休暇を取るために、患者の死期が作為的に操作されている」というものだ。
ただ、噂は噂でしかなく、その実態は定かではないが。
私も死体業のはしくれ。
死人相手の仕事をやってて、年間計画が立てられるわけはない。
計画が立てられないところに、死体業の面白さがあるとも言えるかも。
何はともあれ、年末年始に長期休暇を取るなんて、夢のまた夢だ。
この点では、各種サービス業や交通機関などで働く人達も同じような境遇だろう。
ただ、私は代休もとれないうえに、やってる仕事がコレだから、なかなか明るい気持ちになれない。
片や、年末年始の世間は自分の心情とは真逆をいっている。
そのギャップが大き過ぎて、自分ではその溝を埋めることができないから憂鬱になるのだ。
そんな年の瀬。
ほとんどの人がHappyに過ごしていることだろう。
そんな中でも、私のブログだけは相変わらずドヨヨ~ンとしている。
新しい年に希望を持って、たまには楽しいネタを書いてみたいもんだ。