Home特殊清掃「戦う男たち」2007年分事故と人間

特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

事故と人間

自殺に比べると数は少ないものの、交通事故で亡くなる人も少なくない。
そして、事故遺体は身体に何らかの損傷があることが多い(遺族の要望に応じて、修復することも多い)。

私の周辺でも、今までに何人かの友人・知人が交通事故で逝った。
「え!?アイツが?まさか・・・」
「え!?アノ人が?まさか・・・」
そんな時は、人の命の妙を思う。

私も細かい交通事故に遭ったことはあるが、幸いどれも人身事故ではなかった。
恥ずかしながら、昔は飲酒運転をしていたこともある。
もちろん、今はしない。絶対に。
それにしても、思い出すと恐ろしい。
とにかく、事故にならなかったことに感謝だ。

これまでのブログにイヤと言うほど書いてきた通り、特掃業務は(人間の)死体がらみが多い。
しかし、たまにそうではない仕事の依頼も入る。
消臭消毒・害虫駆除をはじめ、ゲロ掃除、糞尿清掃、そして動物関係。
動物関係で多いのが、やはり(動物の)死体処理とその痕始末。
更に、その中で多いのは犬・猫。

都会の片隅で、街の陰で、多くの犬・猫がひっそり死んでいく。
その数がいかに多いことか。

そんな仕事には、人間の片付けとは一味違った感慨がある。
特に、捨て犬・捨て猫の類になると、その感慨も深く切ない。
捨てられた犬猫も末路は餓死・轢死、はたまた行政に捕まって毒殺。
仮に行き延びたって、飼われていた頃のような温かい暮らしは望めない。
不憫なものだ。

あちこちの道路に転がっている犬猫の轢死体を見かけることがある。
誰にとっても珍しい光景ではないだろう。
ただ、やはり目をそむけたくなる光景には違いない。

少し前の話になる。
とある高速道路を走っていたときのこと。
はるか前方の路上に小さな物体が見えた。
「何だろう」
私の車はスピードに乗ってグングンと物体に近づいていった。
「布?雑巾?」
布キレが風に舞って転がっているように見えた。
「ん?なんだ?」
私は、近づく物体を凝視した。
「うあ゛ーっ!」
悲鳴をあげた私の車は、その物体の上を跨ぐ格好で走り抜けた。
「なんで子猫がこんなところにいるんだよ!」
私の心臓は一気に凍りついた。
物体の正体は、手足がちぎれながらも必死で逃げようとしている子猫だったのだ。

不思議で仕方がない。
そこは、私が日常的に使っている高速道路。
片側三車線、中央分離帯を挟んで計六車線の広い道路だ。
路肩も広くとってあり、両側には巨大な防音壁がそびえ立っている。
そんな道路の真ん中に、いるはずもない子猫が、なんでいたんだろう。

どこからか入り込んだものとは考えにくい。
でなければ、誰かが車から投げ捨てたのか。
誰かが捨てたことを想像したら、背筋がゾッ。
「なんで、わざわざそんな事するんだろう」

私も野良犬・野良猫を拾ってやるような優しさはない。
「うまい」「まずい」等とワガママ勝手なことを言いながら肉を食べている。
通りすがりの動物死体をボランティアで片付けることもしない。
こんな私は、動物の命について説教云々をたれる資格はないだろう。

ただ、動物を轢死させることを楽しみ、公共の道路と人の心を汚す輩には嫌悪感を覚える。
人間の残虐性には際限がないのだろうか。

私の仕事には車が欠かせないし、車を運転しない日はないくらい。
一般道・高速道路も毎日のように走っている。
飲酒運転をしないのはもちろん、スピードも抑え目に心掛ける。
事故の加害者にならないように、被害者にならないように。
でも、いつ何が起こるか分からないから恐い。

事故遺体と遺族、動物轢死体は交通事故と人間のの恐ろしさを教えてくれる。
遺体は修復できても、命と人生は修復できないからね。

 

このページのTOPへ

お問い合わせ

WEBエッセイ「特殊清掃・戦う男たち」

特殊清掃 よくあるご質問

特殊清掃 取材・公演依頼

対応エリア

対応エリア
関東全域をメインに対応いたしております。
その他、全国も関連会社より対応いたします。