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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

マッサージ(前編)

現代社会では、男女を問わずひどい肩コリや腰痛に悩まされている人が多いようだ。
詳しいことは分からないけど、その原因も色々あるみたい。
肉体的な原因はもちろん、精神的なストレスも原因になるかもしれない。

何年か前、私も腰を痛めて整体院に通っていたことがある。
痛みがとれるまで、かなり時間と費用がかかった。
腰をやっちゃった理由は恥ずかしくて言えないけど・・・仕事じゃないことは確か。

整体院や接骨院は、街でもよく見かけるようになってきた。
特に、ここ2~3年の間に急激に増えてきたように思うけど、どうだろうか。
ま、それだけニーズがあるってことだろうね。

家電量販店などに置いてある電動マッサージチェアにも、いつも誰かが座っている。
すごく気持ちよさそうにしている姿を見ると、ついつい私も座ってみたくなる。
しかし、私にとっては「痛い」or「くすぐったい」ばかりで、とても気持ちいいものではない。
幸い、今の私には肩コリも腰痛もないのだ。

あるのは、肉体的にキツーイ!現場をやった翌々日に起こる筋肉痛くらい。
なんで翌々日かって?
多分、歳のせい。
子供の頃や若い頃は、筋肉痛は翌日にきたものだった。
もっと歳をとると、三日後とかにくるようになるのだろうか。

関係ないかもしれないけど、二日酔も同様。
子供の頃・・・もとい、若い頃は翌朝にきていたものが、今では翌日午後にズレてきている。
これも歳のせいだろうか。
ひょっとして、もっと歳をとったら二日酔も翌々日にくるようになったりして。
それはそれでキツそうだね。

言うまでもなく、私の仕事は死体業。
各種ある死体業務の中でも、特掃(正式には「特殊清掃撤去事業」って言うんだよ)は、私がメインで遂行しているもの。
そんな派手な?作業に隠れてしまっているが、家屋解体・リフォーム・ハウスクリーニングから消臭・消毒・害虫駆除も会社にとって大事な仕事なのである。

「消臭・消毒」の依頼が入った。
現場は、マッサージ店。
依頼者の話によると、客室に変な臭いがして不衛生な状態になっているらしかった。
臭いのだけ問題じゃなく、膚炎になっているスタッフもいるらしく、ダニの発生も予想された。

「マッサージ店か・・・」
私は、街でよく見かける整体・接骨院を思い浮かべていた。

現場の住所を聞いたら、日本一の歓楽街と言われている某所だった。
「あの辺は人が多そうだから、商売は繁盛するだろうな」

経営上、店を閉められない事情があり、見積の日時調整は難航。
過去の傾向から、比較的、客足の少ない日時を選んで予定を組んだ。

予定の日、天気のいい昼下がり。
私は、いつもの車で現場に向かった。
目的地界隈が繁華街であることは承知していたので、特に違和感もなくカーナビが示す目的地周辺に近づいた。
それ以上、その先は人通りの多い路地になっており、車での進入は不可。

「これだけの繁華街だから仕方がないな」
私は、近くに駐車場を探して車をとめた。
そして、ナビ地図を頭に叩き込んだ。
車を離れ、歩き始めてしばし。
「だんだん深水にハマってるような気分だなぁ」

目的のエリアは、派手な店が建ち並ぶ・・・モロに風俗街だった。
派手な色使いの看板がひしめき、昼間なのにネオンがチカチカ。
「・・・と言うことは、現場の店も・・・と言うことか?」
そんな街をキョロキョロと見回しながら歩く私は、明らかに挙動不審だった。

「ここかな?・・・」
しばらくウロウロしたところで、電話で聞いた通りの店名の看板を見つけた。
確かにマッサージ店らしかったけど、当初の私がイメージしていたような店ではなかった。

「やっぱ、ここみたいだな」
普通に人通りがある店の前を、私は行ったり来たり。
オドオド・モジモジしていると余計に怪しい。
私は、さりげなく入口に近づいた。

既に、自意識過剰状態の私。
街を歩く人は私のことなんか気にも留めていないはずなのに、誰かが私のことを見ているような気がしてならなかった。
もともと、対人関係が得意ではない私にとっては、ある意味での対人恐怖症状態。

「さっさと入ってしまおう」
自動ドアの前に立った途端、ドアが開いた。

「いらっしゃいませ~」
つづく

 

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