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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

尻の穴

今回は、表題の示す通りのビミョーな内容。
読み方によっては下ネタになるかもしれないし、想像力を働かせると食欲が減退するかもしれない。
ま、いつものごとくその辺は気にせずに書き進める。

死体業の一つに「遺体処置業務」がある。
更に、遺体処置業務と言っても色々な作業がある。
基本的な遺体処置業務は、死後処置作業。
その基本となるのが、人体各穴への綿詰めだ。
耳・鼻孔・口、そして肛門に綿を詰める。

人体は、死んだ瞬間から腐り始める。
(生きているうちから腐っている人間もいるかもれないけど)
そんな人体(遺体)からは、体液や腐敗ガスが漏洩しやすくなる。
死後処置は、それを未然に防ぐために必要なものなのだ。

葬式には色んな人が来て、多くの人が故人の顔を見る。
故人の顔は不特定多数の人を前に曝されるのである。
そんな最後の顔がどうなっているかは、故人(本人)にとっても家族にとっても重要なことのはず。

口や鼻に大量の綿を詰め込む作業は、やっていても見ていても痛々しく感じるけど、故人の美観を保つために仕方がない。
遺体の鼻や口から臭い体液が流れでるのは、家族も故人(本人)も不本意だろうし。

病院で亡くなった場合、ある程度の死後処置は病院で施し済みであることがほとんど。

ちなみに、病院の死後処置は保険の効かない有料サービスでやられることが多いらしい。
本来、病院の目的は、病気やケガの治療・生きている人の健康を回復させること。
したがって、生きている人と死んだ人との間には、キッチリと線が引かれているとのこと。
まぁ、個々の医師・看護士・その他職員が、患者と死人の間にどんな線を引いているかは、私がどうこう言えるものではない。
死人に対する考えや自分の事情は、個々人で異なるだろうから。
私だって、遺体をモノと見なして、割り切って考えないと仕事にならないことが多いし。

ここ何年か少なくなってきたが、私がこの仕事を始めた頃は体液や汚物が漏れだしている遺体が多かったように思う。
病院の死後処置があまかったのか、安置されていた環境が悪かったのか、原因は特定できないけど。

その中でも往生するのが脱糞。
便が漏れだして故人の尻を汚しているケースだ。
自分の便でも「汚い・臭い」と思うのに・・・失礼ながら、他人のそれは尚更だ。
でも、放っておくわけにはいかない。
とにかく仕事と割り切って、オムツ(病院からでた遺体は、ほとんどオムツをつけられている)を外し、ひたすら便を拭き取る。

遺体は、自分で身体が動かせないのは当然で、それにも増して硬直しているものだから、尻をきれいにするだけのことでも簡単ではない。
遺体と自分の体位を、あちらこちらと変えながら作業する。

そして、せっかくきれいになった尻が再び汚れてはいけないから、肛門にあらためて綿を詰める。
耳・鼻・口はピンセットを使うのだが、肛門は自分の手指を道具として、手に持った綿を指を使って押し込めるのだ。
他人、しかも死んだ人のの肛門に指を入れる妙は、例えようもないくらいヘンテコな作業に思える。

特別な仕事や変わった趣味でも持たないかぎり、他人の尻の穴を見ることなんて滅多にないはず。
そして、見たくもないはず。
私だって、他人に尻の穴を見せるなんてまっぴらゴメンだ。
モノが言えない故人も同様だろう。
故人の尻の穴を見なければならない局面は、嫌悪感と羞恥心を故人と共有するような独特の寂しさを感じて、気持ちが寒くなってくる。

尻の穴って、自分の身体の一部でありながら目の届かないところにある。
身体の表面に位置しながらも直視することはできない。
だから、それを自分で知るには限界がある。
しかし、汚いモノを排出する大事な器官。

人間性もそう。
自分のものでありながら、その個性を自分で知ることは難しい。
そして、心にも汚いモノを排出する穴があったらいいと思う。
汚い考えや汚れた思い・汚い行いをきれいに排出できる穴が。

私は、汚ないモノをたくさん抱える者だけど、そんなものは溜め込まないでドンドン排出していける心の肛門が欲しい。

「ケツの穴が小さい男」
にならないように。

 

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