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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

鏡の中

ひと月半前、ある男性と知り合った。
そして、その男性は、たまに本blogを読んでくれているらしかった。
それは、全くの偶然の出来事だった。

会話を進める中で私は、その男性が醸し出す追い詰められた失望感と、その奥に秘められた熱意に、何となく過去の自分を鏡で見ているような気持ちがした。

今までも、読者との出逢いは何度かあった。
しかし、そのほとんどは仕事の依頼者。
利害が関係してくるので、blogについての会話はほとんどしなかった(私の方から避けてきた)。

Web上の書き込みコメントで読んでくれている人の意見や感想に触れることはあっても、生の読者とblogについて直接話をする機会は稀。
そんな生の声を聞けることは滅多にないので、授業を受ける生徒のように彼のコメントに聞き入った。

彼のコメントを要約するとこうだ。
「筆者はプロライター」
「書かれている内容のほとんどはフィクション」
「女性が男を装って書いている」
等々。

いきなり反論したくなるような意見や耳が痛くなるようなコメントはなかったけど、自分なりの分析結果を真剣に話す彼と、的外れなコメント内容とのギャップが何ともおかしくて苦笑いが止まらなかった。

実際、書き手は私一人だけ。
今まで、一文字たりとも私以外の人間が書いたことはない。

始めの頃のわずかな期間はPCを使って書いていたこともあったけど、少ししてからケータイを使うようになった。
外仕事が多いデスワーカーには、PCよりケータイの方が便利。
そして今は、完全にケータイで書くようになっている。
ケータイで書いた(打った)ものを管理人のPCにメールし、それを管理人がWebサイトにアップするという流れで、本blogは立ち上がっている。

内容は、ノンフィクション。
個人(故人)や現場が特定できないようなアレンジやタイムラグ、私の個人的な主義主張・主観・価値観etcはたくさん織り交ぜているけど。

そして、言うまでもなく、私は女ではなく男。
性格は女々しいかもしれないけど。

男の私は、一日のうちで鏡を見るのはだいたい一回。
朝、出掛けるための身支度を整える時くらいだ。
毎日、何気なく見る鏡。
そこに映るのは自分の顔だ。
一つしかない自分の顔。

私は、たまに自分の顔をしみじみ眺めることがある。
男前かどうかは別として、いい顔をしている時と冴えない顔をしている時がある。
そこには、その時々の精神状態がモロに反映されている。
元気なときはハツラツとした顔だし、暗いときは力のない顔になっている。

ツヤのなくなった肌や小ジワを見ていると、月日の経過を覚えてやまない。
平均年齢まで生きられたとしても、もう半分生きたことになる年代の私。

「なかなかしんどかったけど、何とかここまで生きてきたんだなぁ・・・」
そんな感慨に浸りながら、剃り残した髭を探してアゴを撫でる。

この仕事においても顔の表情は大事。
特に、死体業はサービス業でありながらも笑顔を出しにくい仕事。
それでも、笑顔をだした方が気が利く場面もある。
だから難しい。

相手(遺族)によっては、顔の表情ひとつがクレームの対象になることもある。
「ニヤけているように見えた」
「場に合わない表情をしていた」
等と言われて。
そんなことが原因で、代金回収の際にシワ寄せがきたりするのだ。

幸い、私自身は今までそんなクレームをつけられたことはないけど、今後も気をつけなければならないことに変わりはない。

たとえ二枚目や美人ではなくてもいい、人は自分の面構えを大事にした方がいいと思う。
豊かな表情は、人間だけが持ち得る貴重なものだし、自分の人生に与える影響が大きいから。
もちろん、他人に与える自分の印象・回りの雰囲気に与える影響も小さくないだろう。
しかし、第一には、自分に与える影響が大きいと思う。

「いい顔=笑顔」「いい顔=幸せそうな表情」
とは限らない。
苦悶の顔がいい顔のときもあるし、泣き顔がいい顔のときもある。
それは、人により時により異なるだろう。

私の場合、「いい顔」は心が熱を持っていなければでてこない。
心の熱は、幸福・快楽・喜悦の中だけに帯びるものではなく、苦痛・苦悩・苦悶の中にも帯びてくるもの。
それが、私の生きている証、いい顔の源。

歳のせいで肌のハリやツヤはなくなってきているし、小ジワや白髪も目立つようになっている。
ただ、その全てを素直に受け入れるしかない。

何はともあれ、
「残りの半生は、眉間のシワより目尻のシワを増やせるような生き方をしたいもんだな」
と、鏡の中の自分と相談する私である。

 

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