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特殊清掃を扱う専門会社「特殊清掃24時」:特殊清掃「戦う男たち」2007年分

特殊清掃「戦う男たち」

他人のニオイ

私も〝オヤジ臭〟がする年齢になってきた。
ただ、人工的な(化粧品の)ニオイは好きではないので、香水系のものはつけない。
たまにつけるのは、業務用の消臭芳香剤くらい。

これからの季節はオヤジ臭に汗臭さがプラスされて、更によくないニオイになる。
更に更に!特掃作業では、例のニオイを全身に纏うわけで、それによって誰もが忌み嫌うウ○コ男が完成されるのである。

特掃現場で圧倒的に多いのは孤独死の現場。
しかも、周囲に悪臭が漏れ出すまで、誰にも気づかれないケース。

「人間関係が希薄になっている」
と言われるようになってから久しい。
都会の集合住宅に密集して暮らしていたって、〝隣は何をする人ぞ〟状態。
隣人の名前も顔も知らないまま生活することに、何の抵抗もない。
他人とは一定の距離を保ち、リスクのない範囲で他人に興味を持つ。
そんな現状を否定・批難するつもりはない。
どちらかと言うと、私だってそんな人間関係を心地よく思っている一人だから。

特掃の依頼が入った。
場所は、都内でも有数の繁華街。
実際に行ってみたら、迷路のような路地に無数の店が犇めき合っている。
そして、現場建物の前も多くの人が行き交っていた。
その風体が、明らかに街の雰囲気に合わなかった私は、街の人々からの冷めた視線を感じた。

現場の部屋は、古い雑居ビルの一室。
玄関ドアの前に立つと、明らかに死体腐乱臭がした。
それだけではなく、扉の隙間から数匹のウジも這いでていた。

「こりゃ、かなりイッてそうだな」
私は、兜の緒を締めるごとく、マスクのバンドを締めた。

予想通り、中はヒドイ状態。
台所の壁と床にはベットリて腐敗粘土・腐敗液・腐敗脂・・・(その凄まじさは、とても文字では表しきれない)。
その中には、丸々と肥えたウジがウヨウヨ。

「うはぁ~、やっぱかなりイッちゃってるよぉ」
私は、興奮しながらも悲しく呟いた。

「それにしても、よくもこんなになるまで放っておかれたな」
この現場を警察に通報したのは、定期清掃に来た管理会社の人間。
「異臭+ウジ=仰天」
だったとのこと。
何日も前から異臭が漏れだしていたはずなのに、通報したのは近隣住民ではなかったのだ。

実は、このパターンは結構多い。
異臭を感じない訳ではないけど、他人と関わり合いになるのがイヤなのだろう。
ましてや、何らかのトラブルを予感させるような案件では。
プラス、もともと「異臭=死体腐乱臭」といった概念を持ち合わせていないことも一因としてあるかも。
まぁ、一般の人が死体腐乱臭を嗅ぎ分けられないのは当然のことだ。

「ものスゴク臭いんだけど、何のニオイか分からない」
それが、死体腐乱臭。
そして、腹と脳をやっつけてしまうのが死体腐乱臭。

腐敗系汚物の除去・清掃は、何度やってもキツい。
技術的には慣れても、人間的には慣れない。
特に、最初の着手時がキツい!
余計なことを考えず、自分を機械にして手をつける。
それでも、作業を進めていくにつれ、故人に対して親しみ?情?みたいな感情が湧いてくるから不思議だ。
ちょっと間違うと変態チックなこの感覚は、誰にも分かり得ないだろう。

全くの余談。
本blogをケータイで作成していることは何度となく過述した。
車の中で、片手にオニギリ・片手にケータイを持っていることも多い。
特掃現場を思い浮かべながらも、平気で飯が食える自分に、
「現場もイッちゃってるけど、俺もイッちゃってるかもな」
と苦笑。
ま、私の場合は、〝特掃現場があるから飯が食える〟とも言える。
あ~ぁ、悲しむべき汚仕事だね。

自分のニオイって、自分てはなかなか感知しづらいもの。
しかし、ウ○コ男になると違う。
自分が強烈にクサイことがハッキリ分かる。

時として、ウ○コ男は人間忌避剤と化す。
他人を寄せつけないほどの香りを放つ。
人間嫌いの私には、ちょうどよくもあり寂しくもある。

クサイのは、他人のニオイばかりじゃないよね。

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